以前「週間ベスト10」で報告した「京都ぎらい」。「新書大賞*1」を受賞しました。数ある新書を押さえ、発売約1か月で6刷の増刷を重ね、関西圏を中心に異例の売れ行きを見せてトップの座を射止めました。

 

 

朝日選書は深紅のピンストライプがおしゃれな新書です。表紙を見る限りヘイト本のような過激な印象はありません。しかしこれは意外と「過激な本」なのだそうです。 

さっそく中をのぞいてみました。

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「京都にはいやなところがある」

著者の井上章一さんは、いきなり変化球・・・それもビーンボール気味の球を投げてきます。「私が生まれたのは嵯峨だ。だが、京都の街中、洛中で暮らす人々なら、井上は京都の人じゃなかったんだなと扱われる」とは、波乱の展開を予感させるスタートです。

洛中とは現在の上京区、中京区、下京区を中心としたエリアを指すのだそうです。「碁盤の目」に例えられる京都市街地の中でも、昔から中心市街地として栄えてきました。ですからここには代々住み続けている人も多く、住民意識も特別なものがあるといいます。ですから同じ京都市でもそれ以外は「洛外=田舎者」扱いされる空気があるといいます。著者の井上さんはこの部分を「遠回しに皮肉りながら」論を展開します。 

編集者や営業担当者もおもしろがって読んだと見えて、宣伝に使うオビも挑発的な雰囲気です。「千年の古都のいやらしさ、ぜんぶ書く」その横に「ぶぶ漬け」の話は出てきませんが、と念を押すところがクセものですね。

東京出身の私には「同じ関西の話」のように思えますが、当事者の間ではことは細かそうに見えることほど重大なことのようです。

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新書大賞ベスト5

  1. 「京都ぎらい」井上章一 著(朝日新書)
  2. 「生きて帰ってきた男」小熊英二 著(岩波新書)
  3. 「イスラーム国の衝撃」池内恵 著(文春新書)
  4. 「多数決を疑う」坂井豊貴 著(岩波新書)
  5. 「下流老人」藤田孝典 著(朝日新書)

放送局の書店の新書・選書コーナーにあるはずです。ピンストライプの本を捜しましたが見つかりません。「品切れかも?」と書店員に聞くと、「あの本は新しい宣伝用のオビに代えて平台にあるはず」という答えです。目を下に向けると目立つ平台をに「京都」の活字が踊っています。ピンストライプと思い込んで探したため、見落としたようです。

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でも、ちょっと待ってください。このカバー、朝日選書の「企業イメージ」のカケラもないデザインです。オビというよりカバーです。 「新書大賞第1位」のコピーが左上の目立つ位置に配置されているため、白抜き大文字で書かれたタイトルを完全に食ってしまっています。

書店員に聞くと「新書・文庫はロングセラーの定番本と読み捨てのペーパーバックに二極化していることもあり、こうした全面オビ広告は珍しいことではない」のだといいます。表紙に全面オビこれに加えて書店のカバーと包装だけでも大変な騒ぎです。 

手に入れた本のカバーをはずしながら知人(京都に住んでいたことがある)に尋ねたところ。「もう読んだ。京都で暮らしていたからよくわかる。リアルすぎて笑えない」と言われました。この本に書かれていることは決して誇張じゃないことがわかりました。オオコワ。

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売り上げで見ると京都観光ガイドは人気が高いぶるいにはいりますが、「あるある話」でも「京都ネタは鉄板です」と書店員は笑ってました。 

*1:書店員や出版社の新書編集者らが選ぶ「新書大賞2016」(中央公論新社主催)